【多店舗展開】2号店を出す前に、店長を育てる順番がある
「2号店を出したい。でも、任せられる人がいない」

1号店が軌道に乗ってきたサロンのオーナーが、いちばん最初につまずくのがここです。
今日は、この「任せられる人がいない」を、少し違う角度から見てみたいと思います。
その前に、よくある進め方も書いておきます。
1号店が好調なうちに、2号店の場所を押さえる。
内装と開業日を決めて、働きぶりのいいスタッフに「店長をやらない?」と声をかける。
開店が近づいて、初めて「任せられる人」を真剣に考える。
この順番だと、店長候補は「選ぶ」ことしかできません。
「育てる」という工程が、そもそも存在しないからです。
1号店が回っているのは、「オーナーがいるから」
まず、いまの1号店の姿を一度だけ見てみます。
朝、いちばんに店に出て、器材の準備と在庫を確認する。
予約の合間に、発注とシフトの調整を済ませる。
閉店後、数字を見て、翌日の予約を頭に入れて帰る。
この姿は、サロンによっては少し違うかもしれません。
店長を立てて、すでに現場を離れているオーナー。
施術者ではなく、経営者としてサロンを始めたオーナー。
ですが、形が違っても、やっていることは同じです。
予約の埋まり方も、スタッフの配置も、発注のタイミングも。
最終的な判断が、オーナーに集まっている。
1号店が回っているのは
「オーナーが優秀だから」ではなく、「店の判断の中心が、オーナーにあるから」です。
この2つは似ていますが、まったく違います。
2号店を出すというのは、「もう一つ部屋を借りること」ではありません。
「店の判断の中心を、オーナー以外の場所に、もう一つつくる」、ということです。
そう考えたとき、先に決めるべきことが変わります。
「どこに出すか」より先に、「判断の中心を任せられる人を、どうつくるか」です。
なぜ「いちばん信頼できる人」を店長にしてはいけないのか
ここで、多くのサロンがやることを先に言います。
いちばん長く働いている人。
技術がいちばん上手な人。何より信頼できる人。
その人に「店長」として2号店に立ってもらう。
間違いだとは言いません。
ただ、この形には決まった落とし穴があります。
技術がいちばん上手な人を店長にすると
サロンは「いちばん上手な施術者」を失い、「いちばん苦手な仕事」を任された人を、同時に抱えることになります。
店長の仕事を分解すると、こうなります。
・予約の埋まり具合を見る
・シフトを組む
・在庫と器材を発注する
・スタッフの体調とモチベーションを把握する
・月末、数字をまとめて翌月につなげる
どれも、施術の上手さとは別の筋肉です。
そして、この筋肉は「教われば翌月できるようになる」ものではありません。
任され、失敗し、やり直しながら、少しずつ太っていく。
実際、育てずに店長に立たせた人は、だいたい同じ経過をたどります。
最初の1か月は、気合で持ちます。
数字が読めないまま、見ないことにします。
スタッフの前で判断をしくじって、恥をかく。
「やっぱり自分は店長に向いていない」という気持ちが、転職の理由に変わります。
3人採って2人が1年以内に辞める、と言われる業界で、いちばんもったいないのは
いちばん信頼していた人を、この形で失うことです。
つまり、育つまでに、時間がかかります。
ここが、出店計画と店長育成のいちばん大きな違いです。
物件は、決めればすぐ借ります。
お金は、あれば用意できます。
人は、決めてもすぐには育ちません。
だからこそ、「育てる順番」があります。
店長は「昇格」ではなく「段階を上がる」
店長を役職の昇格だと考えると、育成はしくじります。
「技術者」から「店長」へ、一足飛びに任せてしまうからです。
間に、2つの段階を挟んでください。
【段階1】技術者 → 「店の一日」を把握できる人
朝の準備から閉店まで、誰が何をしていて、何が滞っているかがわかる人。
スタッフがつまずく前に、手が伸びる人。
練習は、地味です。
- 週に一度、店の数字
- 予約の消化率、キャンセル、
- 物販
を一緒に見る。
月に一度、シフトを本人に組ませて、オーナーは口を出さない。
【段階2】「店の一日」 → 「店の月」を預かる人
- 月の目標を立て、月末に振り返り、翌月に反映できる人。
- 月初に目標を一緒に立て、月末に振り返りの時間を持つ。
ここでのポイントは、オーナーが答えを言う前に、本人の考えを先に聞くことです。
「店長は自分で判断するもの」と本人が感じられるのは、この瞬間からです。
月末の振り返りで、例えばこう聞きます。
「今月、予約の空きが目立ったのは水曜の午後だったね。どう思う?」
育っていない人には、答えを先に教えたくなります。
「人員を減らして」「キャンペーンを入れて」と。
でも、その答えを渡すと、翌月も本人は答えを出さなくなります。
渡すのは問いだけで、答えは本人に出させる。
これを1年続けると、オーナーが口を開く前に、本人が数字を開いて話し始めます。
【段階3】「店の月」 → 「店の外」まで見られる人
- 次の予約をどう埋めるか、広告、採用まで考えられる人。
- オーナーがいない前提で、判断して進められる人。
ここまで来て、初めて2号店の店長候補です。
目安として、段階が一段上がるのに、半年から1年かかります。
つまり──
2号店を出す日の1年前に、段階1を始める。
それが「育てる順番」です。
「技術を離れたら、お客様がついてこなくなるのでは?」
ここで、研修でもよくいただく質問です。

店長候補の施術の比率を下げることへの心配です。
答えは、一気にゼロにしない、です。
段階を上げるごとに、施術を少しずつ減らす。
いちばん予約が入る枠は店長候補に残し、そのほかの時間を「店を回す時間」に変えていく。
そして、お客様には段階の中で、こう伝わる形をつくっておきます。
「あの人が店にいなくなった」のではなく、「あの人がこの店を守っている」と。
施術の枠は減っても、お客様の接点が消えるわけではありません。
むしろ、予約の両端で顔を見る機会が増える、というサロンもあります。
育てる相手の選び方──サインは地味なところに出る
「誰を育てるか」にも、順番があります。
技術がいちばん上手な人から選ぶのではなく、「店のことを気にしている人」から選びます。
サインは、地味なところに出ます。
- 在庫が減っていることに、いち早く気づく。
- 後輩の働きぶりを、気にしている。
- 予約表の空きを、自分のことのように見ている。
店長に必要なのは、この「気にする力」です。
技術は、後から伸びます。
店長が育つと、オーナーの席が変わる
もう一つ、順番として大事なことがあります。
店長が段階を上がるぶん、オーナーの仕事も上がっていく、ということです。
店長が「店の一日」を見始めたら、オーナーはその店の細かい判断を手放して、サロン全体の数字を見ます。
店長が「店の月」を預かったら、オーナーはその先の人を育てることと、次の店の設計に移ります。
2号店を出してから忙しくしているオーナーがいるのは、オーナーの仕事が上がっていないからです。
オーナーの次の「仕事」を事前に決めておく。
これも「育てる順番」の一部です。
最後に、あの言葉に戻ります
「任せられる人がいない」
育てていない人には、任せられません。
育てていないまま任せるのは、信頼ではなく、放り投げです。
任された人も、店の数字も、いちばん傷つきます。
逆に言えば
「任せられる人がいない」と感じている今こそ、育て始めるタイミングです。
想像してみてください。
もし、明日から2週間、店に行けなくなったら・・・。
スタッフからは、連絡が何度となく来ることでしょう。
「この予約、動かしていいですか」
「この金額で、いいですか」
戻ってきたとき、店がそのまま回っていたなら。
出店の準備は、もう始まっています。
もし全ての判断をオーナーにいちいち確認し、店がうまく回っていなかったら。
「あなたがいなくても判断できる人」を、まず一人つくることです。
──────────────
店長育成を、一緒に見てみたい方へ
この記事を読んで、「うちの店ではどうなんだろう」と
思われた方のために、60分のオンライン相談を設けています。
店長候補の現在地や、育成の進め方など、
サロンの状況をお聞かせください。
研修の案内ではありません。
▼オンライン相談の予約はこちら(ZOOM)
「お問合せ内容」の無料コーチング希望にチェックをつけてくださいませ。
