売上2倍のサロンの店長が実践する現場マネジメント|1日の業務フローを完全解説

はじめに
「なぜ同じ商材、同じ技術なのに、売上に2倍の差がつくのか?」
この疑問に対し、私は200店舗以上のエステサロンを支援してきた経験から、明確な答えを見出しました。
売上を大きく左右するのは、店長(またはオーナー)の日々の業務遂行方法です。
多くのサロンでは、店長自身も施術に入りながら、スタッフ管理、売上管理、顧客対応など、多岐にわたる業務をこなしています。本記事でご紹介する内容は、「余裕がない」と感じられるかもしれません。
しかし、売上を2倍に成長させたサロンも、当初は同じ状況でした。
本記事では、複数名のスタッフが在籍するサロンにおいて目指すべき理想的な店長像をご紹介します。すべてを一度に実現する必要はありません。できることから段階的に取り組むことで、着実に成果を積み上げることができます。
それでは、12ヶ月で売上を2倍に成長させたKサロン(3店舗展開)の店長の業務フローを、実況中継形式で詳しく解説していきます。
売上2倍のサロンにおける店長の6つの重要業務
前日準備:翌日の予約カルテを全スタッフで確認
営業終了後、スタッフ全員で翌日の予約カルテを確認します。
確認すべき項目は、単なる予約内容にとどまりません。
確認項目:
- お客様の前回の施術内容および肌状態
- 前回のクレーム履歴と対応内容
- 未精算のお支払い残高
- 提案予定の商品やサービス
- 翌日の目標売上の再確認
各施術担当者が、翌日来店されるお客様一人ひとりのカルテを精査し、「翌日実施すべき対応」を明確化します。
この前日準備が、翌日の接客品質を大きく左右します。
業務①:朝礼での重要事項共有
翌朝の朝礼では、スタッフが前日に確認したカルテ内容から、特に重要な情報を共有します。
共有例:
- 「本日の○○様は、前回若干のご不満がございましたので、特に○○な対応を心がけてください」
- 「△△様には、○○のご提案を予定しております」
この情報共有により、スタッフ全員が「本日の優先事項」を明確に認識できます。
もちろん、本日の売上目標の再確認も行います。
業務②:施術開始時のプレカウンセリングとスタッフのティーアップ
施術中に、店長はお客様へのご挨拶とプレカウンセリングを実施します。
例えばフェイシャルの場合、お客様がクレンジングと洗顔を終えた段階が最適なタイミングです。
プレカウンセリングの流れ:
「○○様、いつもご来店いただきありがとうございます。本日のお肌の状態を確認させていただきます」
店長は、カルテに記録された前回の肌状態と、本日の肌状態を比較確認します。
「前回は、この部位の乾燥が進行しておりましたが、かなり改善されているようですね」
お客様に「本日のお肌のコンディションについて、ご自身ではいかがお感じですか?」と、ヒアリングを行いながら、本日の施術内容を決定していきます。
そして、スタッフに対してパフォーマンスとして指示を提示します。
「○○様の本日の施術では、この部位のくすみに対して、△△による集中ケアを実施してください」
スタッフのティーアップ:
朝礼で「商品提案を実施する」という申し送りがあった場合、スタッフのティーアップを行います。
「○○様、本日の担当の△△は、美容液に関する専門知識が豊富でございます。○○様が気にされているシミに対して、非常に効果的な美容液がございますので、詳しくご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
お客様が承諾されたら、店長はスタッフに引き継ぎます。
「それでは、△△、よろしくお願いいたします」
店長の役割:
- お客様への丁寧なご挨拶
- 前回と本日の状態比較確認
- 本日の施術内容の決定(パフォーマンスとしての指示提示)
- 商品提案がある場合の事前告知によるスタッフサポート
このプロセスにより、お客様は「店長が私の状態をしっかり把握している」と感じ、スタッフは「店長がサポートしてくれている」という安心感を得られます。
業務③:1日の中間地点での売上達成状況確認とスタッフサポート
午後2?3時頃の中間地点で、店長は本日の日割り売上目標に対する達成率を確認します。
「現時点で、目標に対する達成率は何パーセントか?」
この数値把握により、午後の業務遂行方法を適切に調整できます。
また、店長は店内を巡回しながら、スタッフとお客様の会話に注意を払います。
接客時の言葉遣いや対応方法について気づいた点があれば、後ほどスタッフに対して教育指導を実施します。
スタッフが「お客様に商品提案を行う」タイミングであれば、提案前に商品知識の確認や声かけによるサポートを行います。
業務④:施術後のアフターカウンセリングによる満足度確認と効果実感の促進
施術終了後、店長はアフターカウンセリングを実施します。
「○○様、本日はお疲れ様でございました。担当スタッフの施術について、いかがでしたでしょうか?何かお気づきの点はございませんでしたでしょうか?」
ここで、スタッフの施術および接客に関して、お客様からフィードバックをいただきます。
そして、施術前後の変化を、お客様ご自身に実感していただきます(この確認は施術直後にスタッフも必ず実施しています)。
「施術前と比較して、お肌の変化についてお気づきになったことをお聞かせいただけますか?」
お客様ご自身が変化を認識することで、「このサロンに通う価値がある」という確信を深めていただけます。
スタッフが商品を提案したものの、お客様が購入を決めきれていない場合、店長がクロージングを担当します。
タイミングが合えば、店長がお見送りを実施します。スタッフも同行できれば、それが最も理想的です。
このひと手間により、お客様は「大切にされている」と実感され、リピート率が大きく向上します。
トライアングル接客によるスタッフ成長の加速

ここまでご紹介した業務①-④には、ある共通点があります。
それは、「お客様・スタッフ・店長」の3者で接客を実施するということです。
通常、サロンでは「スタッフ1名」が「お客様1名」に対して接客を行います。しかし、売上2倍のサロンでは、必ず店長が加わります。
これを、私は「トライアングル接客」と呼んでいます。
トライアングル接客の3つの実施場面:
① 施術開始時のプレカウンセリング: 店長がお客様にご挨拶し、状態確認を実施。スタッフをティーアップする
② 施術中のサポート: 店長がお客様およびスタッフの様子を確認し、必要に応じて声かけを実施
③ 施術後のアフターカウンセリング: 店長がお客様の満足度を確認し、効果実感を促進。スタッフとともにお見送りを実施
この「トライアングル接客」には、大きなメリットがあります。
常にお客様・スタッフ・店長の3者で接客を実施することで、店長はスタッフのレベル、スキル、状態をリアルタイムで把握できます。
そして、その情報を今後の教育指導に活用できます。また、店長自身の接客やクロージングをスタッフに見せることで、スタッフへの教育効果も得られます。
まさに、一石二鳥の手法です。
業務⑤:店長自身によるカウンセリング実施とスタッフへの模範提示
カウンセリングは、スタッフのみに任せるのではなく、店長自身も実施することが重要です。
店長がカウンセリングを実施することで、お客様の状況を正確に把握できます。さらに、高い成約率でスタッフに模範を示すことができます。
「店長は、このようにしてお客様の心を動かしているのだ」
スタッフは、店長のカウンセリングを観察することで、多くを学習します。
業務⑥:スタッフのカウンセリング見守りと適切なタイミングでのアドバイス提供
スタッフがカウンセリングを実施する際、店長は可能な限り近くで様子を観察します。
「スタッフがどのようなカウンセリングを実施しているか?」
「お客様の反応はどうか?」
この観察により、スタッフの強みと課題が明確になります。
プレカウンセリング(施術前のカウンセリング)で修正点があれば、施術開始前にスタッフと短時間の打ち合わせを実施します。
「施術中に、お客様のこの部位の悩みについて、もう少し詳しくヒアリングしてみてください」
「本日は、○○を提案する流れで進めましょう」
このように、施術前に方向性を修正することで、スタッフは自信を持って接客できます。
そして、アフターカウンセリング・クロージングの前にも、スタッフから施術中の様子をヒアリングします。
「お客様は、どのようなことを気にされていましたか?」
「施術中、どのようなお話をされましたか?」
この情報をもとに、店長はアフターカウンセリングやクロージングでのアドバイスをスタッフに提供します。
魔法のコーチングシートによるカウンセリング品質の標準化
Kサロンでは、カウンセリングに「魔法のコーチングシート」を活用しています。
カウンセリングは、どうしても個人の経験や感覚に依存し、属人化してしまう傾向があります。
「Aさんのカウンセリングは成約率が高いが、Bさんは低い」
このような状態では、サロン全体の売上は安定しません。
しかし、魔法のコーチングシートを全員が活用することで、誰がカウンセリングを実施しても成約率が一定水準で安定するのです。
これが理想的な状態です。
スタッフの経験やスキルに関係なく、一定の品質を維持する。
これを、「スタッフの平準化」と呼んでいます。
中間カウンセリングによるお客様のゴールすり合わせ
Kサロンがもう一つ徹底しているのが「中間カウンセリング」です。
中間カウンセリングも、魔法のコーチングシート同様、ヒアリング用のテンプレートを使用します。
スタッフは、そのテンプレートに沿って中間カウンセリングを実施できます。
たとえば、10回コースの5回目。
ご来店当初にお客様が抱えていた悩みは、施術を重ねることで変化している可能性があります。
「当初は乾燥が気になっていたが、現在はシミが気になる」
「肌のトーンは改善したが、もっとハリが欲しい」
そうすると、施術内容も変更が必要ですし、お客様の目指すゴールも当然変化します。
中間カウンセリングは、お客様とともに、現在地とゴールをすり合わせる場です。
同時に、日頃のお客様の不安や不満をヒアリングさせていただく、非常に重要な機会でもあります。
この中間カウンセリングも、スタッフが実施しますが、店長も自ら実施します。
店長がお客様の声を直接ヒアリングすることで、サロン全体の改善点が明確になりますし、スタッフにとっても「店長がお客様を大切にしている姿勢」が学習機会となります。
Kサロンでは、中間カウンセリングを徹底することで、リピート率85%を実現しています。
売上2倍を実現したKサロンの変化
実施前:
- スタッフ離職率:30%
- 新規成約率:30%
- リピート率:50%
実施後(12ヶ月):
- スタッフ離職率:10%
- 新規成約率:75%
- リピート率:85%
成功の鍵は、「店長の日々の業務遂行方法」を段階的に改善したことにありました。
まとめ
売上2倍のサロンの成功要因は、特別な技術でも高額な広告でもありません。
「店長が日々、何を実践するか」にあります。
もし、貴サロンで「スタッフがすぐに離職する」「新規顧客が契約に至らない」「リピートが継続しない」という課題を抱えておられるなら、まずはできることから段階的に取り組んでみてください。
小さな変化の積み重ねが、大きな成果を生み出します。
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